投稿日:2017-07-01 Sat
今年のイタリア、モンツァ農業学校での授業を終えました。気温38度にまで上がった灼熱のなかでの庭仕事!生徒さんたち、よく頑張ってくれました。
第一週目が初級講座: 日本の庭における地形、石組、枯山水、掃除について
第二週目が上級講座: 茶庭~その意味、構成、構成要素について。作庭実習。
初級講座の山場は、「石のシンポジウム」でした。演習に使った土場にゴロゴロと山にして放ってあった石を、それぞれの表情を読みながらシンポジウムという形式で一体化し、結果としてなにか神聖な趣まで作り出すことができたことに生徒さんたちもびっくり、そして感動したようです。(最初は取り壊すつもりでやったエクササイズでしたが、あまりにもよくできたので、上級コースで毎年徐々に作り上げていくことになっている「モンツァ農業学校の日本庭園」の一部として残すことに決定!)



初級講座では、もうひとつ、3.8m角の小さな庭が3つ繋がった敷地に、山の景色、平野の景色、海岸の景色、という3連の枯山水を作りました。3つの小庭を仕切るようにして橋が架かっていたのもそのまま利用。

山の枯山水 普通滝口となる部分はスイスの山上湖!

平野の枯山水 龍ではなくヤモリのような造形になった!
上級講座では、茶庭についてかなり詳しく勉強しました。茶の背景にある思想、茶庭の使い方、構成要素の意味と配置の仕方(飛石、延段、蹲など)、そして茶庭の植栽など。
上に書きましたが、「モンツァ農業学校の日本庭園」をこれから毎年上級のコースで作り上げていくことになりました。今回はその出だしです。そこでまず、生徒さん個々人に庭のマスタープランを考えてもらい、図面化。そのあと皆で議論してひとつのまとまった方向性を得るまでに至りました。そして今回は
― 「石のシンポジウム」の周りの地形と植栽のあしらい
― 蹲の設置
― 枯流れ(滝口石組~中流の石橋まで)
を施工しました。
今後、この庭は毎年徐々に手を加えられてよりいっそう庭らしくなっていくでしょう。



2週間の講座、最近ほとんど日常生活で使うことのないイタリア語で講義をするのはやはり疲れますが、理論3割、実践7割くらいなので、なんとか頭が爆発しないで済んでいる(?)というところでしょうか。
イタリアの生徒さんはとても真摯で熱心。それはほんとうに打たれるものがあります。しかも今回はスイス人、フランス人の参加者もいました。皆、好奇心と向上心で満ちています。
去年初級コースを受講して、今年上級コースを続けて受講してくれた生徒さんたちが、去年の授業を受けたあとに自分で作ったという庭の写真をいろいろ見せてくれました。彼らは日々の作庭の仕事において、いわゆる日本庭園をつくるわけではないけれど、この講座で学んだこと(例えば石組など)を確実にそれぞれ活かしてくれているのがよくわかります。うれしいです。
私たち日本人も、私たち自身のすばらしい庭文化と庭づくりの技術をもう一度見直して、若い人たちにきちんとそれを知らしめ、後世に伝えていく必要があると、このような機会を通してあらためて実感します。
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投稿日:2016-11-21 Mon
モンツァ農業学校の日本庭園コースが、庭師星宏海さんの講習をもって今回のシリーズを無事終了したようです。私の回で生徒さんと一緒に作った枯山水に、星さんが生徒さんと一緒に竹垣を作って場を締めてくださいました。滝石組の背後のあたりに建仁寺垣、全体を眺める正面の結界に金閣寺垣を作ってくださいました。こんな仕上がりです。
星さんの卓越した技能に感服です。そして本当に熱心に講習に参加してくれている生徒さんたちに心底感心します。
こうして日本の庭がイタリア人の間でより深く理解され、イタリアのいろんな地方やそれぞれの土地の状況、御施主さん、作庭者の趣向に応じて、創意工夫がなされ、さまざまに発展していくとしたら、とても意味のあることだと思います。
このコースはまだ始まったばかり。来年は、今回の生徒さんに対してさらに上級編(内容的に発展した講座)を提供し、また新しい生徒さんに初級編を行うことになっています。そしてうまく運べば、それが継続していく―。モンツァ農業学校の敷地内に徐々に日本庭園を作っていこう、という案もあります。講座はそこを実習の場として展開されていく、という構想です。
私自身の日本庭園に対する理解や経験談をイタリア語で直接伝えられるのは幸せなことです。楽しみでもあり、いつも大いなるチャレンジです。教えることもアートである、と私は思っています。やるからには、生徒さんたちと一期一会のこころで向き合い、いつも創造的でユニークな方法で教えたい、そう信じてやっています。
私に教えられることって、まだあるの?と率直に思いますが、今回教えた後にそれなりの好評をいただいたところをみると、なにかまだあるのかもしれません。当然ですが、自分も勉強を続けなければなりません。
投稿日:2016-10-21 Fri
ミラノ郊外の町、モンツァでの5日間の授業が終わってほっとしました。最近は仕事でおしゃべりする機会があまりないので、5日間で5年分くらいのおしゃべりをしたな!という感じです。しかも日本語でさえ長々としゃべる機会はないのに、イタリア語で5日間も・・・ 頭がクラクラするくらい疲れました。
今回は日本の庭における地形の話、そして石組・枯山水の話、最後に庭の掃除の話をしました。ただ話はほどほどに。外で実習をする時間をなるべく多くとるようにしました。15人の生徒さんたちは、とても熱心で、教室での授業もとても真面目に聴いてくれるし、外での実習でも、みんな率先してスコップを握り、土を動かし、石を運んで据えて、と頑張ってくれました。おかげで、皆が意気投合して、すばらしい講習になったと思います。

これは「石のシンポジウム」という名の石組の練習 ・・・ 重森三玲氏の貴船神社の石組に倣って!

これは生徒さんが各自持参した「私のすきな景色」の写真をもとに、スケッチをおこし、そこから残山剰水の技法によって景色を抽象化して石組にまで昇華させたもの!!例えば、この石組はある生徒さんが持参したベトナムの入江の景色の写真がもとになっている・・・

これも同じ実習の別の作品。ある海岸の風景とそこで景色を楽しむ若者たちを石組に表現したもの!

同じ実習。窓から眺める島と岬の風景をどんどん抽象化して・・・

これは石組による土留めの演習。

これは遣水(曲水)の地形づくりと石組の演習

最後の演習。滝から河口までの流れの石組と入江、荒磯、岬、州浜、野筋の地形づくりと石組。



いつもそうですが、教えるというのは一種のパフォーマンスでもあり、また庭づくりにおいて「何が大事か」を自分で再確認するよい機会でもあります。
最初はどうなることやら、と不安でしたが、なんとかクリア。この機会を作ってくれたフランチェスコ、ありがとう!このあと、庭師の星宏海先生がご登場です!
で、来年もまたやる、って!?
投稿日:2010-04-12 Mon
今年もトリノ大学農学部緑地デザイン修士課程(アッカーティ教授とフランチェスコ)の招きで日本庭園の講義をしにトリノに赴いた。厳密にはトリノからさらに車で1時間半のビエッラという山のふもとの町だ。ガエ・アウレンティのデザインしたキャンパスの講義室を使ってのセミナーだ。フランチェスコが第一日目を担当し、私が第二日目の授業を担当する。西洋人の目から見た(分析した)日本庭園と日本人の目から見た日本庭園をセットにすることによって学生さんたちはちょっと複眼的に日本庭園について学ぶことができるに違いない。今年も例年のように、石と砂を使った枯山水の庭の演習(机の上で模型大で)と色紙を使った坪庭のデザイン演習をした。どちらも学生さんたちには好評だ。


投稿日:2009-07-26 Sun
ヴェローナにある風水建築学校 Scuola Italiana Architettura Fung Shui の招きで5月16・17日の両日、日本庭園セミナーを実施した。参加者は12人。一日目は日本庭園の歴史や形態を講義し、中でも枯山水について詳しく紹介した。演習として机の上で石と砂を使って①滝を表現する②自由に造形をする、という二つを試してもらった。また二日目は特に茶庭について詳しく紹介した。二日目の演習は、私の簡単なお茶のデモンストレーション(盆略)のあと、石と砂を使って延段と飛石を試してもらった。そして最後のデザイン演習として、坪庭の模型づくり。また今回は特に庭と「地のエネルギー」や「気の流れ」との関係についてなにか実践的な要素を取り入れてほしいという主催者側の要請があったので、枯山水の石組が自然の景色や自然のエネルギーの流れを表現したものだという考えに立って、太極拳の基本動作の中で特に山や水にイメージを得る動作を自分が山水(石と水)になったという想定で試してもらった。いっけんいかがわしいものに思えるかもしれないが、やってみてまったく的外れな練習ではないと思った。作庭者である自分が地球の軸に根を下ろした石になり、水の動きを感じることによってよい枯山水は生まれるかもしれないからだ。太極拳の抱虎帰山という動作などは、重い石を抱えてそれを据えようとするときの身体動作と実は非常に似通っている――。セミナーは参加者から好評をいただいた。2010年10月にはこの風水建築学校の一団を日本の庭見学に案内することになっている。
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