投稿日:2009-11-22 Sun
奈良国立博物館の八窓庵という茶室で点前をする機会を得た。古田織部好みという四畳台目の茶室。午後の曇天の薄明が風炉先窓、勝手窓を透け通って点前をする自分の居場所を照らす。その心地よさはなんとも形容しがたいものだった。草庵風の茶室の中で点前をするのは初めての経験だ。これまで名席といわれる茶室をいくらか拝見はしてきたものの、そこでは点前をすることはおろか、点前を具体的に想像することさえ難しかった。今回は違う。この歴史的名席の中で温かい湯が風炉の中で煮えたぎっている。そして自分が棗からお茶をすくい、柄杓でお湯をくみ、茶筅をふるい、お客様のためにできるだけおいしく点てようと全神経をその場に集中させている。その自分の身体と神経を温かく包んでくれるこの和の建築がある。それはこれまで習ってきたお茶の事々をいろんな意味で肯定してくれる実体験だった。「泡のすべてに神経が行き届いているようなおいしいお茶でしたよ」と言ってくださったお客様のことばを聞いて、よかった、と本当に思った。
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