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  S A C H I M I N E

Author:  S A C H I M I N E
世界の庭を見渡して考えたい―ほんとうにいい庭ってどんな庭?お客さまのよりよい暮らしに貢献する庭づくりをめざして、日本とイタリアの長~い歴史と深~い文化と豊か~な自然をインスピレーションの泉とします!。。。でも現実は暑さ寒さ虫と戦う植木屋の毎日でございます― (っ^-^)っ゙
ホームページはこちら:www.sachimine.com

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カルロ・スカルパの庭 ― ヴェネツィアの Querini Stampalia
サンタ・マリア・フォルモーザ(S. Maria Formosa)のちょうど裏手にあたる。以前はスカルパがデザインした木と鉄でできた反橋を渡って直接エントランス部に入場していたのだが、この橋は閉鎖されてしまっている。運河をさかのぼったほうにある石橋を渡ると、クエリーニ・スタンパリア財団とその美術館への受付があった。初めて訪れた7年前は写真を撮る事も禁じられていなかったが、2年前はすでに禁じられていた。入場料に6ユーロとられた。

運河沿いに展開する小部屋とそこに通じるスカルパがデザインした「屋内の運河」。廊下という建築要素を人間の運河として位置づけしたようにも見える。この廊下の脇に降りる段がある。この段は、鉄の格子扉を透かして外から浸水してくる運河の水の面に降りていく。屋内にできた船着場。格子扉からは運河の水面がそとの空の明かりを反射した光がこぼれこむ。


スカルパのデザインは装飾的になってしまうかもしれないぎりぎりのところで装飾からむしろ背理する。なぜなら、あとから着けた飾りではなく、必要な部分(ディテール)が内部の核心というような部分から湧き出てきて形を成したものの結果が装飾として記録されたからだ。その装飾は表面的には儀式的な様相を見せるが、スカルパが演出する儀式は、いわゆる「儀式的」ではない。極めて豊穣な舞台演出だ。この場合、運河の水の動き、その動きに応じて展開される人間の動き、運河の水が生活の水として次元を変える瞬間の緊張感あふれる認識を空間のしつらえによって表現するということだ。この運河沿いの室内空間を歩き回るとスカルパのそのような意図が読み取れる。

大ホールへ降りる。ここはヴェネツィアでもっともヴェネツィアらしい空間だと思う。ここにはいると、建物が水の浮力を得て均衡を保っているということを実感するのだ。それはこの床が一段低くなっているからか、天井の高さがホール全体を箱のように感じさせるからか。この空間はヴェネチアの建築を支える木杭と泥の摩擦と水の浮力を感じさせる。実際、運河の水位が最上に達するときには、このホールの床の端に刻まれた側溝にも水がしみ込んでくるのだろう。

そしてこの大ホールから自然光のやってくる前方を眺めると、そこにはスカルパがデザインした庭がある。芝生で覆われた庭の奥手の地盤は大ホールの床から80cmほど土盛りされている。つまり大ホールから見ると庭の地面がもっとも容易に目に入ることになり、庭がいっそう水に拮抗して「地面のもの」として強調される。高い地盤の奥、長方形の庭の長手の一辺には高さ15mにも及ぶだろう高い壁が聳え、二種類のツタで覆われている。高い地盤の手前、今私が中に立っている大ホールの床面から外へ連続して奥行きの狭いコンクリートテラスが庭への通路を兼ねて展開し、そのテラスは高い地盤と高さ80cmほどのコンクリートの擁壁で仕切られている。その擁壁は実は横手に走る噴水運河の躯体でもある。その通路を左へ、噴水運河を右手に見ながら進むと、一段、二段と段を上がり、いつしかコンクリートの躯体は腰掛にちょうどよい高さになる。庭を巡る者は運河に注ぎ込む一糸の落水の音を一間先に聞きながら、初夏であれば背中にシモクレンの花の香りを浴びながら、盛夏であれば目の前にミルトゥス(学名: Myrtus communis)の白い花の香りに顔を洗われながら、理想の瞑想にふけることができるというわけだ。そのようなしつらえを作りえたスカルパは当代きっての庭のデザイナーでもあるといえるだろう。奥には四角い蓮の生えた噴水池が設けられ、そのさらに奥には金箔と貝殻のモザイクが一列に埋め込まれたコンクリートの仕切り壁が立つ。高い地盤はそのほぼ全体を芝生で覆われ、端にいくつか灌木が植わっている。構成的にシンプルであり、材料の使い方には面白みが豊富にあり、庭の空間は物語を語りかけるようである。庭の中で理想の時間が止まる――。そして静止した時間の中で動く、水、木々のゆらぎ、音(すなわち空気の振動)、自分の脈拍。庭のデザイナーとしてスカルパをもっともっと勉強したい。
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庭園 | 04:52:09 | Trackback(0) | Comments(0)
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